コトラーのマーケティングマネジメントとは?
マーケティング神様と呼ばれ、世界からも賞賛を浴びているフィリップ・コトラーは、マーケティングを「充足されていないニーズや欲望を突き止め、その重要性と潜在的な収益性を明確化・評価し、組織が最も貢献できる標的市場を選択したうえで、当該市場に最適な製品、サービス、プログラムを決定し、組織の全成員に顧客志向、顧客奉仕の姿を求めるビジネス上の機能」であると定義しています。
おおまかにまとめると、変化していく人々のニーズや、組織が最も稼げる市場を常に調べ、収益を上げ続けること、ということですね。
まとめてしまえばシンプルですが、実行するには難しく、しかし大切なことです。
コトラーによると、現代のマーケティングは3つの軸から展開してきていると言います。
この3つの軸は現代においていきなり提唱されたものではなく、1950年代から時代を経るごとに追加されてきました。
1950年代:製品管理
1970年代:顧客管理
1990年代:ブランド管理
ただ画一的な商品を作り、販売するところから始まり、顧客のニーズをとらえ、更に商品価値を高めていく、という流れですね。
そもそも、マーケティングとは18世紀に起こったイギリスの産業革命を受け、大量生産が可能になったアメリカで提唱された概念で、「いかに不良在庫を抱えることなく、効率的に販売していくか」を研究した結果の総称なのです。
元々は販売部門の工夫分野だったマーケティングですが、1950年代、つまり「製品管理」の分野が提唱された辺りからほかの部門、例えば製造や企画等にもじわじわと広がっていきます。
マーケティング概念の変遷
上記の3つの軸は、時代が下るごとに増え、マーケティングもそのたびに大きく4回、アップロードされてきました。
60年代の1.0から始まり、2.0、3.0.
そして、2007年に行われた、4.0への最新アップデートです。
この3つの軸と4回のアップデートを、まとめていきましょう。
マーケティング1.0:製品管理
1950~1960年代
製品の製造・販売に重点を置いたマーケティングです。
産業革命によって商品の大量生産・大量消費が可能になったことによる、いかに製品を競合相手よりも多く作り、管理してくかをまとめた概念です。
マーケティングを学ぶ上で真っ先に覚えるであろう「マーケティング・ミックス」「4P分析」もこの時期に誕生し、当時のアメリカではもちろん、製品販売の基礎として今も機能しています。
この時期の代表的な例として、フォード車が開発・製造・販売を行った「T型フォード」があげられます。
単一のデザイン、単一の車種、単一の色のみを開発、製造し、大衆(マス)に向けた広告を打って成功した、最も典型的な例です。
「A customer can have a car painted any color he wants as long as it’s black」
(T型フォードを買う人は、好きな色を選ぶことができる。その色が黒であるなら)
という現代で発言したらツイッターの玩具にされるかさもなければ炎上待ったなしの強気な言葉からも、当時このマーケティングの手法がそれほど有効だったかを示しています。
私も言ってみたいものです。
「私を恋人にする人は、理想の恋人を得ることができる。
その理想が私そのものであるなら」
いやあ……。
これは確実に炎上しますね。
マーケティング2.0:顧客管理
1970~1980年代
消費者のニーズを意識したマーケティングです。
1970年代に起こった石油ショックをきっかけに、消費者の買い控えが起こったことによるマーケティング手法の見直しから、この概念が誕生しました。
従来の大局・大衆を標的にした戦術的なマーケティングから、より現実の顧客のニーズを意識した戦略的なマーケティング活動が見直されることになったのです。
この戦略のことを「STP(Segmentation/Targeting/Positioning の頭文字)マーケティング」と呼び、“ニーズごとのグループ化”、“市場の選定”、“顧客から見た製品のポジションの確立”を行うことによって他商品との差別化を図る流れが生まれました。
ある程度の品質さえ保証されてさえいれば商品が売れていた時代から、景気の悪化から顧客も“画一的で自分の本当の希望に沿うかわからない商品”ではなく、“より自分の希望にかなった商品”を望む時代になったのです。
つまり、背が高くて高級車に乗っていて大企業に勤めている男(性格問わず)だけが特別もてる時代から、好きな女に特別優しい、情の深い男(付加価値があるとなおよし)がもてる時代になったのですね。
ここで勘違いしてしまうのは、「つらい仕事を辞めさせ、家事を任せることで家にしまいこんで、女が死ぬまで愛してかわいがる」ことが、“好きな女に特別優しい”わけでも、“情が深い”わけでもないということです。
そう、2.0の時点ですら顧客の本当の要望を間違えると大惨事になるのです。
気を付けましょう。
大切なのは、好意の押し付けではなく、対等な対話です。
マーケティング3.0:ブランド管理
1980~2000年代
“世界をより良い場所にすること”を重要視したマーケティングです。
なんだかすごくぼんやりしていて、かつなんだかいい感じのテーマですね。
ようは、商品の価値自体を高めて生活をより豊かなものにしようね、ということです。
物質主義から脱却し、そして資本主義をよりマイルドに、よりいい感じにまとめあげたという感じです。
マーケティング2.0から始まった「商品の差別化」が発達を続け、多様な商品や、それを望む顧客を作り上げてきたのです。
この年代から、消費者(Consumer)とのみ呼ばれていた顧客が、生産消費者(Prosumer)と呼ばれ変わるようになりました。
明確に生産者と消費者とで分断されていた時代から、完成された商品を作り上げる共有者として、考え方が変化したのです。
また、80年代には普及を始めたパーソナルコンピューターによって、ソーシャルメディアが急速な発達を始めました。
コトラーはこのソーシャルメディアを、表現型と協同型の二つに分類し、定義しました。
表現型ソーシャルメディア
各種SNSやブログ、動画配信サイトなど、消費者が能動的に情報を発信することによって、ほかの消費者が影響を与える、いわゆる「口コミ」です。
この様々な価値観を持つ消費者から得られる口コミをもとに、企画を展開させていく企業も、現代では増えてきています。
共同型ソーシャルメディア
ウィキペディア、口コミグルメサイトなど、開かれたプラットフォームに、参加者が自由に編集、投稿作業を行う、集合知を利用したサービスです。
これによって、マーケティング担当者は、より市場の声に耳を傾け、必要な情報を精査していくことが必要になりました。
こうした概念を、「共創(CoCreation)」と呼び、消費者それぞれの好み、ニーズをより深く理解していくことが必要な時代に変わっていきました。
このあたりの考えかた、マーケティングの進め方は「ペルソナマーケティング」に詳しく説明されています。
が、長くなってしまうので割愛します。
簡単に言えば、「架空の顧客を精巧に作り出し、その顧客の好み、ライフバランスなどを元にマーケティングを進めていく」手法です。
興味と時間があれば調べてみてください。
マーケティング4.0:自己実現
2010年代~
心理学者であるマズローの「欲求5段階説」の、第5段階位、「自己実現欲求」を元にアップロードされました。
個々人の、「あるべき自分になりたい」「理想の自分になりたい」という欲求を、満たそうという考えに基づいて設定されました。
1.0~3.0のアップデートに比べ、今回のアップデートが短期間(10年以内)のうちに行われた理由として、「消費者がこれまで購買時に判断していた、買う、もしくは買わないの選択の方法に変化が起こった」ことがコトラー本人によって明らかにされています。
商品を購入したあとの、個々人で行うカスタマイズなどのプロセスまでも加味して商品を選択する傾向が、無視できないほど大きくなってきたためです。
この、2010年に提案された新しい概念はそれまで製品の品質と顧客を第一に考えてきた考え方からさらに踏み込み、その組織の構成員一人ひとりがこの組織の一員として「何をしたいのか」「どんなものを作りたいか」を考え、組織全体で同じ方向を向いていくことが求められています。
コトラーは、この4.0のアップデートに伴い、顧客購買プロセスの枠組み、「5A」を作りました。
・Aware(認識)
・Appeal(印象)
・Ask(調査)
・Advocate(推奨)
の5項目です。
インターネット上で商品を「認識」し、商品の「印象」を確かめ、口コミなどから「調査」を行い、「推奨」されていれば購入する。
この流れを端的に言語化したものになります。
近年、商品やサービスを認識、入手するツール、経路が多様化しており、その分ほかのユーザーによる「推奨」の影響がより強く出ているのが、特徴です。
このマーケティング4.0で大切なのは、前述した「顧客・従業員の自己実現の支援、促進を促すための商品やサービスの開発」です。
マーケティング3.0を完全に上書きするものでも、その上位互換でもなく、むしろ3.0を補完し、より自然に広めていくためのアップデートなのです。
この4.0にアップデートしたマーケティング方法で成功した企業の代表として、エナジードリンクで有名なレッドブルがあります。
翼を授けてくれるアレですね。
この企業は、FaceBookやTwitter、InstagramをはじめとするSNSやYouTubeなどのソーシャルメディアを駆使していますが、実はその商品自体の宣伝はほとんどしていません。
レッドブルはゲームや音楽、スポーツを始めとしたさまざまなイベントのサポートに徹しており、肝心な商品の宣伝は本当におまけ程度にとどめています。
ほとんど宣伝行為はしていないのにも関わらず、「様々なアーティストやアスリートのサポートをしている」という事実が、レッドブルそのものと企業のプラスのイメージにつながり、購買意欲を高めるのです。
コトラーのマーケティングマネジメントまとめ
50年代のアメリカで誕生し、現代に至るまでに繰り返し繰り返しアップデートを繰り返してきたコドラ―のマーケティング論をここまで一気に書いてきましたが、いかがでしょうか。
変化していく社会情勢、個々人のライフスタイルの変容に伴って進化してきたマーケティング論ですが、商品や販売する地域の社会的事情などを鑑みて組織にとって最も最適なマーケティング方法を顧みていくことが大切です。
もちろん、顧みるには狭い組織の狭い枠組みの中で考えているだけでは足りません。
スマートフォンやパソコンのアプリを駆使し、消費者が本当に求めているものを可視化・数値化し、周囲を巻き込んで上の人間を黙らせる必要があります。
頭一つ抜けたマーケティングとなります。
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