需要予測の手法を用いた、マーケティングの方法
需要予測マーケティング【需要予測とは】
特定の商品の需要動向を決める各種の要因とその需要に与える影響を分析し,これをもとに市場調査や各種の予測結果を考慮して将来の需要を予測すること。
企業活動の基本となるもので,仕入れ,生産,投資,資金,販売などの計画を策定するのに欠くことができない。
種々の手法が総合して用いられるが,近年は計量経済学モデルの利用が進められている。
ブリタニカ国際大百科事典より。
なんのこっちゃです。
大切なことなのは分かるけど、大切なことしか分からない。
そういう顔をしていますよ(私が)。
分からないことを分からないままに日々を過ごしていいのはこじれて爛れた恋愛をしているときのみなので、頑張って噛み砕いて考えていきましょう。
需要予測とは、上記を噛み砕いて解説すると、「在庫準備の段階で、前もって売れる量を予測すること」になります。
過去の販売実績データを使って在庫の最適化を図る。
必要とされる商品の需要を予測する。
なんの為にそんな予測を立てる必要があるのでしょうか。
それは、言ってしまえば不良在庫を抱えないため、もしくは在庫不足に陥ることのないように、です。
部屋の片隅にうずたかく積まれた自作の同人誌やCDの山、もしくはノルマ達成まで程遠いチケットの在庫に、そして事務所からのチケット代の催促に震えた経験は、誰しもにあると思います。
ない?
なるほど。
人生には経験しなくてもいいことなんて腐るほどあるのです。
気にせずにいきましょう。
個人単位の失敗なら、本人が泣きを見て庭先でお焚き上げからの焼き芋パーティ開催、もしくは最悪夜逃げするだけなのでまだ良いのです。
しかし、その組織が大きくなればなるほど、不良在庫に対する損害は莫大なものになります。
在庫不足に陥ったとしても、その分だけ売り上げの機会を逃してしまうことになります。
チケットはノルマ完売しないと事務所の怖い人からめためたのぼこぼこに怒られることになりますが、そういうノルマでもない限り、在庫はちょっと手元に残るくらいがちょうどいいのです。
さて、ではどうやって同人……商品の在庫量を決めればいいのでしょう。
あてずっぽうに予測したところで千里眼も持っていない私たち普通の人類では一山当てるどころか在庫の尽きた倉庫の前で立ち尽くすか、在庫の山に埋もれて頭を抱えるだけです。
しかし、この需要予測も方法と前提さえ間違えなければマーケティングの強い助けになってくれるのです。
その方法を見ていきましょう。
需要予測マーケティング【需要予測の方法】
一般的に、需要予測の考え方として統計的な予測、人的な予測の2つがあります。
統計的な予測は、過去の実績、結果からある程度先の未来の予測値を算出します。
算出の方法としては、移動平均法、指数平滑法、回帰分析など様々なものがあります。
様々な分析方法があるということは、簡便な手法から複雑な手法まで多様にあるということです。
初手でうっかり複雑怪奇な算出方法を見てしまったら何もかも投げ出して「知らんわそんなもん!もう寝る!!」と部屋の隅で震えて眠る事態になってしまうこと請け合いですので、後程、比較的簡単な予測の手法を紹介していきたいと思います。
そもそも、後述しますが、この需要予測を用いたマーケティングにおいて、複雑怪奇な統計的な予測方法はいくらでもあっても、完璧に正確な予測方法は存在しないのです。
さて、もう一つの考え方である人的な予測は、顧客数や、見込みの客数、商談の結果や受注データなど、それまでの経験に基づく勘で予測します。
統計的な予測よりも正確に、より近い未来を予測でき、社会情勢などの状況への短いスパンでの対応も容易です。
正直なところ、統計的な予測値は正答率が高いかと言えばそうでもないのです。
何故なら、この統計的な予測は、”過去に起こったことは現在・未来でも必ず起こる”という前提で考えられているので、変改し続ける状況への対応が実際のところなかなかできないのです。
実測値と比べても必ずと言っていいほど誤差が出ますので、当たる前提で進めていくと手ひどいしっぺ返しを食らうことになります。
ですので、「やらないよりは、やった方がマシ」くらいの気持ちで、あくまでシンプルに計算し、人的な予測結果でその結果を補足しつつ、見直しのサイクルをできるだけ短く、かつ定期的に回すことで、現実的な業務に落としこんでいくことが大切になります。
無理に回帰分析やら各種ツールに手を伸ばしてモノにしたとしても、それに見合うだけの結果を得られにくい、ということですね。
もっと分かりやすく言うと、馬鹿高い「女にもてる方法」を書かれた本を買い漁り、読破し、その通りに実行したとしても、そもそも”過去の栄光に未だに縋りついている、本当にもてていたのか分からない何者か”が書いているのだから上手くいくはずがない、ということです。
需要予測マーケティング【統計的な需要予測の算出方法】
ここでは、3種類の初歩的な統計的な需要予測の方法(単純移動平均法、加重移動平均法、指数平滑法)を記載していきます。
前半2つは売上高の平均を各方法によって算出し、予測値を出します。
最後の1つは、前半二つで出した予測値と実際の売上高を使って、今期、もしくは来期以降の予測値を算出していきます。
需要予測マーケティング【単純移動平均法】
過去一定期間1か月~1年)のデータの平均を計算しl少しずつ値を移動させながらその平均を算出していく方法です。
対象となった年のデータを、3か月~5か月のまとまった期間に分け、それぞれ1か月ずつずらしながら平均を出していきます。
単純なものにはなりますが、3か月分の移動平均の計算式も記載しておきます。
(〇月分売り上げ+△月分売り上げ+□月分売り上げ)/3=予測値です。
まあ普通の平均の出し方と同じですので、条件さえわかればすらすら計算していけると思います。
年間3~5か月分の計算済みのデータも作りましたので、なんとなくこういう感じなんだな、と参考にしてみてください。
こちらの表では、移動平均の対象月ごとに結果を比較できるようにしています。
つまり、この場合であれば来月の結果は5620円、5768円、もしくは5778円に近い値になるだろう、ということです。
需要予測マーケティング【加重移動平均法】
単純移動平均法では、単純にデータの平均を出して結果を求めました。
こちらの加重移動平均法では、期間ごとのデータに”重み”(価値ととらえてもらってもかまいません)を与え、期間ごとの重要度に差をつけて算出します。
この”重み”を着けることによって、突発的な需要の変化の影響を少なくしたり、直近のデータなどの重要視したいデータを選別することができるようになるのです。
データに価値をつけることによって、単純移動平均法よりもデータの動きに素早く反応してくれ、状況の変化への柔軟な対応も可能になるのです。
こちらの数式も書いておきましょう。
Σ{ある期間の売り上げ高×ある期間の重み}=予測値
出てきましたね、文系が真っ先にぶち当たる敵、Σ(シグマ)
簡単に言えばなにかしらの数列を全て足す、という意味の記号ですが、何を隠そう私、この記号を数学的な場面で最後に出会ったのが高校2年生の頃なのです。
こいつに躓き、確立に再起不能にされ、悔し紛れに数学教師に投げたあの言葉。
「こんなこと、将来なんの役に立つんですか!?」
それがこの答えです。
いつどんな時に使うか分からないんだから黙ってこの問題集を解け、というわけですね。
過去を悔いて泣いても仕方ないのでやっていきましょう。
ちなみに計算式の書き方はおおむね同じであっても固定ではなく、いくつか種類があったりするのですが、今回は調べていて一番シンプルなものを採用しました。
では、先ほどの表と同じデータで、計算していきましょう。
期間ごとに設定した”重み”の合計値が1になるように、設定していきます。
今回、”重み”は直近のデータほど重いものとします。
今月:0.3
先月;0.2
2か月前:0.2
3か月前:0.2
4か月前:0.1
これらの仮定を元に、先ほどの計算式を当てはめていきましょう。
5670*0.1+4890*0.2+5560*0.2+5100*0.2+5200*0.3=5237
単純移動平均法とは結果に差異が生まれていますが、この差異は直近のデータを重要視したために発生しています。
“重さ”にもっと差をつけると、もっと差異が生まれてきます。
この差異が、データのノイズともいわれるものです。
需要予測マーケティング【指数平滑法】
前期(過去)の実績値と予測値を利用し、”重み”を着けたうえで今期の予測を行う方法です。先の、移動平均法で算出された数値を使って計算していきましょう。
計算方法としては、
今期の予測売上高=前期の予測売上高+α(前期の実績売上高―前期の予測売上高)
となります。
来期の売上高を予測したい場合は、
来期の予測売上高=今期の予測売上高+α(前期の実績売上高―前期の予測売上高)
となります。
前触れなく出てきたこのα係数は、「平滑化定数」と呼ばれる係数で、αが1に近いほど実績と予測のズレが大きく反映されることになるため、直前の実績を重視した予測になります。
また、逆に0に近いほど実績と予測のズレをあまり反映させなくなるため、過去の経過を重視した予測になります。
需要変動の大きい季節ものの商品、サービスであれば1に近い値を、安定した需要の商品、サービスであれば0に近い値を設定するのが良いと言われています。
下記に計算結果の表を置いておきます。
上の表の通り、定数の値によって需要予測の結果が変わってきます。
どの数値を使用するかは、売り出そうとしている商品によって異なりますが、ここで誤ったものを選択すると大変なことになりかねませんので、気を付けてください。
3種類の比較的簡単に行うことのできる、統計的な予測方法を紹介してきましたが、大丈夫でしたでしょうか。
これらの計算方法よりももっと本格的に統計の計算を行うためのツールや計算方法を使用した手法ももちろんありますが、今回はこの辺りでやめにしましょう。
前述しましたように、この統計的な予測方法はあくまでも「当たらないこと」を前提に、人的な予測方法と組み合わせて行うものです。
シンプルに簡便に計算を行い、後程人的な予測方法で算出した結果と合わせて判断した方が良いのです。
無理に「高性能だから」「正確だから」と扱いの難しいツールに挑み、時間ばかり浪費するより、その方がよっぽど効率的です。
……そう、無理にΣだの√だのを使う必要は、ないのです。
需要予測マーケティング【人的な予測方法】
前述しましたように、人的な予測方法とは勘と経験から人間が未来の需要を予測していく方法です。
昨年度からどれだけの成長が見込まれるのか、といった簡単な予測から、営業からの発注計画(フォーキャスト)を元にデータをグラフにする方法、果ては完全な直感・神頼みまで多様に存在します。
現場業務をしていると、「例年この時期にはこれだけの売り上げがあったから今年もこれくらい発注しておこう」「まあ大体このくらい発注しておけば足りるだろ」、などそれまでの経験や実績から発注量を決めることが良くあります。
しかも案外それが当たるんですよね。
限られたコストや時間を想えば、統計的な予測方法から簡易的に算出した結果を参考にしつつ、勘と経験をもとにした最終結論を出す、くらいの感覚でも十分成果は出るはずです。
もちろん、それには積み上げられたデータと、商品規模に見合うだけの経験が必要になってくるわけですが、その辺りは先輩、上司などなどに投げましょう。
人間、できることがあればできないこともまたあるものなのです。
需要予測マーケティングまとめ
長らくお話をしてきましたが、結局のところ何が需要の予測において大切なのかをまとめると、
・過去の実績から未来の需要の目途を立てる。
→過去の実績を正確に記録、閲覧できる
・使用する過去の実績から、できるだけノイズを取り除く。
→過去の実績からノイズを取り除くことができる。
・どのようにして統計結果が出たのかを理解し、その数値の根拠を他人に説明できるようにする。
→誰が見ても理解しやすい、簡単な資料を作成できるモデル、ツールがある。
ということになります。
要するに、どんなデータを得たいのかを明確にしたうえで、その目的に合わせて使いこなせるシステムを導入し、かつ、そのシステムに頼り切らないことが大切、ということですね。
高性能システム、自動計算など何やら便利な言葉に乗せられて思考停止することなく、自分たちにできる範囲、使用するシーンを想定し、適正なシステム運用をしていきましょう。
頭一つ抜けたマーケティングとなります。
を伝授していきます。
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