マーケティングとは?
まずは最初に、「マーケティング」とは何かについて考えていきましょう。
マーケティングの神様で知られているフィリップ・コトラーはこのように述べています。
「マーケティングとは、個人や集団が製品および価値の創造を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである」。
またアメリカ・マーケティング協会(AMA:American Marketing Association)では、「マーケティングとは、個人及組織の目標を満足させる交換を想像するため、アイデア、財、サービスの概念形式(コンセプト)、価格、プロモーション、流通を計画し、実行する過程である。」と書いてあります。
少し難しく書いてしまいましたが、簡単に言うと「消費者や市場を分析しニーズを知り、売れる仕組みを作ること」です。
また、開発〜販売の一連もマーケティングと言います。
マーケティング・コンセプトとは?
「コンセプト」とは、日本語に訳すと「概念」です。
言葉通り言ってしまうと、マーケティングの概念ということです。
もっと簡単に言ってしまうと、マーケティングの基本的な考えや理念を示しています。
またマーケティング・コンセプトは、時代と共に変遷しているのです。
服装、技術、家電などが歴史とともに変わっていくように、マーケット・コンセプトも変わっているのです。
マーケティング・コンセプトは大きく分けて「生産志向」「製品志向」「販売志向」「マーケティング志向」「社会志向」の5つに分けられています。
順を追って時代と共にどのような道筋を得て発展して来たかを具体的に説明していきます。
話を簡単に説明するために、レストランを経営するオーナーという設定を例として挙げ説明していきたいと思います。
生産志向
生産志向は、「物を作れば売れる」と言われていた時代です。
モノがあまりなく、またあまり選択肢がなかった時代なので、作ればモノは飛ぶように売れました。
要するに、需要>供給な時代でした。
アメリカでは1930年くらいまで支配的な志向でまた日本では、1950年まで続きました。
企業側はとにかく、「どのようにしたら効率的にモノを大量に作れるか」、また「どのようにしたら生産コストをいかに抑えられるか」と生産を重点的に考えていた時代です。
この時代を代表的に表す例として挙げると、アメリカの自動車T型フォードが挙げられます。フォード社は先駆けにベルトコンベアーを用いた作業を取り入れ、効率的に大量生産を可能にしました。
これがのちに生産工場の基本となります。
ここで、レストランを経営するオーナーを例として出して話していきたいと思います。
今あなたは最近田舎にレストランを開きお店を始めることにし、レストランのオーナーとして経営しています。
ここは都会に比べ周りには競合するレストランもあまりいません。
なので、味は至って普通なのですがオムレツをレストランで提供するだけでお客さんは沢山来てくれました。
ですが、お客さんがあまりにも来るようになり、忙しくなったのでお店の回転率をあげるためにオムレツを大量に作れるようにとオムライスを自動で作ってくれる機械を買うことにしました。
その結果、効率的に大量にオムレツが作れるようになり、また従業員も減らすことができました。お店の効率も上がり、また利益も上がりました。
またサイドディッシュにあるサラダやドレッシング、またドリンクなどはバイキング制にしお客様が各自取りに行くように変えることにより、従業員が配る労働力を減らし人件費を減らすことにも成功しました。
製品志向
生産志向によって、モノは大量生産され人々にモノが行き渡るようになりました。
そのような時代に入ると、次に人々は製品同士を比べるようになります。
その結果高品質・高性能のモノが求められ、企業は製品の品質や性能を追求していくようになります。
要するに、「良いモノを作れば売れる」と言われ製品に重点を当てていた時代です。
アメリカでは1930年から1950年までの時代をさしています。
あなたは田舎にレストランを開いてから、数年が立ちます。
お店を開いてから人々が沢山行き交うようになったので、他のお店や住宅もここへ移り街は再開発され以前より栄えるようになりました。
他のレストランも立ち競合も増えたため、あまり自分が経営するレストランに人が入らなくなりました。これでは、経営の危機だと思い、食品のクオリティを向上するためにあなたは試行錯誤を重ねることにしました。
そして、オムレツの卵を国内産の高級卵を利用することにしました。
また、ケチャップも自分の農家で取れたトマトから自家製のケチャップを作ることにしました。
よりお客様に健康的な食を提供できるようにと食にこだわりを持つようになり、このレストランにしか出せない独自の秘伝のケチャップを作ることができました。
また、最近はインスタ映えが流行っていることをテレビで知ったので、女性にもお店が流行るようにと可愛いハート型のオムライスを作りメニューに載せるようにしました。
これら二つの工夫を足すことにより、またレストランに足を運んでくれるようになり、他のレストランよりもお店にお客が来てくれるようになりました。
販売志向
製品志向により、市場には良い製品同士が並ぶようになりました。
そうなると、良品同士の中でもどのように差をつけて買ってもらうか?と考えるようになります。
なので、販売志向の時代に入ると人々は「ただ高品質・高性能のモノを販売するだけではダメだ、営業や販売の努力も必要」という考え方に変わっていきます。
要するに、「販売にも力をいれよう」と言う時代に入ると言うことです。
お店の経営も一時期は食品のクオリティを上げ工夫することによって、経営も右肩上がりになりましたが、どうもそれだけでは人は店には来ません。
なので、営業や販売の努力も必要と感じ、あなたは販売にも力を入れるようになります。
ウェブサイトを作ったことがなかったので、企業に綺麗なウェブサイトを作るように発注しました。
また、最近はTwitter、Instagramやfacebookなでも流行っているのでそれぞれアカウントを作り料理の写真や店内の様子などの写真を投稿しました。
また、ハートのオムライスをSNSに投稿してもらえると次回お店に来たときに500円安くなるキャンペーンなどを行いました。
SNSやウェブサイトを作ったおかげで、地元の人だけではなく投稿やウェブサイトを見た人たちが全国からお店に足を運ぶようになりました。
また、SNSで有名になったためテレビの取材まで入るようになり、店は瞬く間に全国的に人気のお店になりました。
マーケティング志向(顧客志向)
販売志向は、やがて顧客のニーズを無視してでも、強引に売り込む企業が増えて来ます。
企業本位の考えだけでは売れなくなったので今後は「マーケティング志向」という顧客ニーズを重点とした考えに移っていきます。
顧客のニーズやウォンツを把握し、ニーズに答えるような製品を開発し市場で売ります。
あなたは、お店の経営をもっと向上したいと思い、それにはお客様の声を聞いた方がいいと思いアンケート調査をすることにします。
一番人気の料理は何か?価格帯は妥当か?それらのアンケートを集め、お客様の声にもっと添えられるように料理に力を注ぐことにしました。
また、それ以外にも他のレストランにお客として訪れ他のレストランを勉強しに行ったりもしました。
社会志向
近年は、企業の利益だけを追求するだけではなく、企業が社会に与える影響についても考えるコンセプトが見られます。
その例としては、企業の売り上げの一部を慈善事業に寄付をする手法をコーズ・リレイテッド マーケティングと呼び、企業の販売している商品などを購入することによって社会貢献ができることをお客に訴えことによって商品を購入することを促します。
また、マーケティングに関わる全ての関係性を理解しマーケティングを総合的な活動と考える手法をホリスティック・マーケティングと呼ぶマーケティングもあります。
他には、企業が従業員に対して行うインターナル・マーケティングという手法もあります。
これは、従業員の満足度を高めるためにあるマーケティングです。
従業員の満足度を上げることによって、スキルの向上やより高いサービスを顧客に提供することができ、利益も上がり結果好循環が生まれるということです。
前と同じようにレストランを例として挙げて説明していきます。
これまでは、お客様のことを中心として考えてきたので、従業員のことを考えることも大切だと思いました。
そこで、あなたは従業員全員が高い質のサービスをお客様に提供できるようにと、技術や知識がちゃんと取得できるようなトレーニングとちゃんとしたマニュアルを作ることにしました。
また、従業員の不満や改善点を聞くために従業員に対してアンケートを取ったりもしました。従業員の中には、子供や家庭がある方もいたので、フレックスタイム制を導入することにし、働き方も変えることにしました。
また、優秀な従業員に対しては、週一回必ず行うミーティングで取り上げ従業員皆拍手を送り褒めるようなことも行いました。
震災や災害があった際には、レストランの一部のメニューを1点につき1円寄付するようなキャンペーンなどを行いました。
これからはどんな志向が必要か?
今までは、4つのマーケティング・コンセプトを中心的に見てきました。
では今後私たちにはどんな志向が必要なのでしょうか?
かつては、マーケティング・コンセプトは一つで十分でしたが、現代の社会はより複雑になってきており、一つのコンセプトを正解として考えていくのには限界があります。
これからは、3つのことを中心的にマーケットアウト視点、イノベーション視点、リノベーションの視点です。
これらは、現代の複雑な社会情勢を表しているのでしょう。
また、これからの未来には、一点の視点だけではなく視野を広げ様々な視点から見ることが大切です。
また、インターネットや技術の発展により変化の激しい今の時代に、生き残るには変化に対応できる柔軟な考えや今までにない、イノベーティブなかつ個性を生かしたコンセプトが必要となるのではないでしょうか。
今までに出してきたレストランの例で言うと、お客さんのことだけを考えるだけではなく、従業員、環境、社会、仕入れ先など様々な視点に立って一つ一つの関係性や総合的に見る力やまた様々なところに力を入れていくことが必要になってくるでしょう。
また、生き残るためにはこのレストランにしかない価値や個性を出しお客さんにも認識してもらえるように成長していかないといけないでしょう。
マーケティング・コンセプトまとめ
ここまでの記事で、レストランを例に挙げて4つのマーケティング・コンセプトを時代ごとにまた未来も踏まえ順番に見てきました。
生産志向は、どちらかと言うと駆け出しの時代で何から何までも分からないので手探り状態の時代と言えます。
製品志向は、手探りした結果少し経験がついて分かったので、今度はもっと商品やサービスを向上することを目指した方がいい!と磨き時代に入ります。
磨き終えた後は、今度は磨いた技術や商品をみんなに伝えないと買ってもらえない、もっと発信していこう!と販売志向に入ります。
販売を経験した結果、やはり自分たち本意の考えではダメだ!もっと顧客のことも考えなくてはいけないのだなということに気づき、販売志向に入り顧客のニーズやウォンツはなんだろうと調査をし始めます。
顧客や製品の向上に力を入れ頑張った結果、これ以外にも力を入れる必要があるのではないかと思い当たります。
そこで、従業員のことや社会、環境などを考え初めます。
これは、ある程度企業の利益も出てきて余裕が出てきたからこそ考えられるのですよね。
駆け出しの頃には考えられない領域です。
こんな風に書くと、社会志向が一番周りも見えていてマーケティング・コンセプトとして一番なのでないかと思うかもしれませんが、マーケティングコンセプトは需要と供給の関係からできているので、どのマーケティング・コンセプトが間違っていてまたどれかが合っているということではありません。
また国の経済発展によっては、生産志向を中心としてやっている国やまた製品志向を中心として行っている国もあります。
時代の変化や経済の発展とともに、取るべきマーケティングコンセプトは変わるので、変化が早い現代は企業各自が考えることが必要になってくるでしょう。
では、
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